2010年3月23日火曜日

「決断できないリーダー」が会社を潰す [著]冨山和彦

週刊朝日3月26日号内の書評です。
著者は資格があった方がいいと、東大法学部で司法試験に合格したにもかかわらず、司法修習生にはならず、企業に就職。
その後の経歴は、多彩で常に攻めている感じですね。
みんなこういう風になれ、というのは無理な話ですが。
タイトル、「グレ力」のほうがいいと思います。




「決断できないリーダー」が会社を潰す [著]冨山和彦
(2010年3月23日 朝日新聞)



■お座敷犬になるな 野犬になれ

 この題名なら誰でも思う。著者はチーム前原のメンバー、JAL再建の内幕の加筆があるんじゃないか、と。でも肩すかし。が、若者に向けて書かれた半自伝だとしたら悪くない。「一身独立」のススメだ。

 「永遠不滅の組織集団はない」と言う著者の原体験は、小2で父の勤める会社が突然倒産したことだった。何か資格があったほうがいいと、教育大付駒場から進んだ東大法学部で司法試験に合格。が、以後がユニーク。司法修習生にならずに小さな外資系企業に就職。翌年仲間とコンサルタント会社を起業し、バブル崩壊で会社が傷んでからは、「とにかく食べるための仕事」と“出稼ぎ”(地方出向)に励む。携帯電話会社の立ち上げで、まさに一からのドブ板営業。似たIQの人間としか交わりがなかった著者は、ここで人間の多様性に目覚める。で、曰く“(コースを)脱線しろ、グレろ、リスクを取れ、ストレス耐性を身につけろ”。エリートはいわばお座敷犬、野良から始めて野犬になれ、のススメである。余談だが、本書の旧題は『指一本の執念が勝負を決める』。こういった勝ちの強調か人を脅す(本書)のが昨今の書名のトレンドとはいえ芸がない。素直にグレ力とか野犬力じゃダメ?