2010年2月12日金曜日

輝集人:刑事裁判を年140件受任の弁護士・泉谷恭史さん /和歌山

今どき、まだこういう人情味にあふれた弁護士がいるんですね。
こういう弁護士って、ドラマの中だけかと思ってました。
平日ほぼ毎日出廷し、1日に6被告の裁判に立つこともあるとは、ものすごいエネルギーですね。
でも、この記事中からだと、そんなエネルギッシュな感じよりは、何事もドンと受け止める寛容さを感じます。




輝集人:刑事裁判を年140件受任の弁護士・泉谷恭史さん /和歌山
(2010年2月9日 毎日新聞)



 ◇被告の喜ぶ顔に達成感--泉谷恭史さん(58)
 09年に受任した刑事弁護は140件。統計はないが、司法関係者は「まねできる人は他にいない」と口をそろえる。刑事裁判が好きなのかと尋ねると、「好きなことないけど、誰かがやらなきゃいかんからな」。
 2月は28人の被告の弁護士を務める。平日はほぼ毎日出廷し、1日6被告の裁判に立つことも。面会にも週に1回は顔を出し、話に耳を傾ける。説教くさいことは一切言わない。心を開かない被告には「言いたくないことは言わんでいい。でもウソつく権利はないぞ」と説く。
 だが、被害者への謝罪の手紙を書かない男や、万引きを10年以上繰り返す親子を、法廷の外でしかりつけたこともあった。「やったと認めて他人に迷惑かけてたらおわびせなあかんでしょ。反省が足らない被告には言わなしゃあないやん」。被告に罪と向き合わせる難しさがにじむ。
 出身は堺市だが、司法修習を和歌山で過ごしたのが縁になり、31歳で和歌山弁護士会に入会。98年7月に和歌山市であった毒物カレー事件では、第1審で林真須美死刑囚の弁護団にも加わった。大阪の弁護士と弁護方針を巡って議論を重ねる日が3年半続いた。「証拠がなく大変な裁判。立証の切り口や検察との争い方を他の弁護士から吸収でき貴重な機会だったとも感じる」と振り返る。
 毎朝7時前に事務所に出勤し、やるべきことの優先順位を四つ決め、午後5時には事務所を出てのれんをくぐる。一人で飲む焼酎と、仕事の合間に読む時代小説がわずかばかりの息抜きだ。そんな弁護士の仕事が好きだという。「裁判がイメージ通りいかなくて落ち込むこともある。でも無罪を取れたり、被告の喜ぶ顔を見た時の達成感が忘れられないから」。少し照れてそう言った。【藤顕一郎】
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 ■人物略歴
 1951年堺市生まれ。当初は民事裁判官を志望したが、全国を転々と異動するのが性に合わず弁護士へ。事務所は和歌山市万町7(電話073・428・2880)。